【活動報告】中国系企業で日本の女性はどのように働いているのか

はじめに

日本でも中国と同様に、内資系企業、外資系企業という言葉がある。そして、これまで一般的に外資系企業と言われたときに、日本人がイメージするのは欧米の企業だった。そのため、外資系企業というと、欧米の社風を持った会社というイメージを持つ人が多いが、中国企業も日本からしたら外資系である。昨今中国企業の日本進出も増えており、中国企業で働く日本人も増えている。そこで、今回は中国系の企業、機関で日本の女性がどのように働いているかに焦点を当て、その特徴を浮き彫りにした。

1 中国系企業を選んだ理由

今回の登壇者は、中国系企業だから選んだというよりは、やりたい仕事を探した結果、中国系企業に就職したという状況の人が多かった。中國東方航空の乙重氏は、日系の航空会社に就職していたが、新たな部門の立ち上げということで、そのようなことをしてみたいということで、就職したということだった。また、バイドゥの岩間氏は、会社が六本木ヒルズにあるからというのが理由で、そのことを採用面接の際にも伝えたところ、共感を得て働くことになったということだった。バイドゥの場合は、日本語が公用語のため、中国語を話せなくても良いということだった。

バイドゥ株式会社 岩間 千香子氏

2 中国系企業の特徴1 スピード感

日系企業と中国企業で異なる点の一つが仕事の進め方という点だった。日本の場合は、スタンプラリーと言われるように、担当者から上司にハンコの捺印の決裁文書の稟議がある。そして、その稟議が通ってからはじめて動くという形だが、中国大使館の瀧口氏によると、もちろん決裁文書はあるが、上司に口頭で承諾を得られた段階で行動に移すことができるということだった。
乙重氏からは、日本人だと実施する前にリスクなどさまざまなことを考えてから行動に移す。しかし、ひらめいた案をとにかくまずやってみるというのが中国企業。日本人ははじめる前にいろいろ考えてしまっているが、それは自分自身を追い詰めるだけなので、行動してしまう方が良いということだった。
一方で、岩間氏はIT企業というスピードを重視体質ではあるものの、テストでサービスをローンチする際に、中国で求められるサービスの水準と、日本での求められるサービスの水準が異なるため、あまりに拙速な状況のものだとストップをかけることもあるということだった。

中國東方航空 乙重 茜氏

3 中国系企業の特徴2 成果主義

次に感じられたのが、中国系企業では即戦力、そして成果主義が求められているということだった。マカオ航空の伊藤氏は、今年大学を卒業してマカオ航空に就職。3か月の研修の後、すぐにフライトに入ったということだった。また、先輩後輩に関わらず、飛んだフライトの数で給料が決まるということだった。日本では給料は一般的に年功序列で在籍年数が長かったり、年齢が高いと一律に高くなる傾向がある。また、先輩、後輩という関係も厳しく、先に入社した人はたとえ年齢が低くても後に入った人は先輩として扱う時もあり、日本よりもやりがいを感じられる部分もあるようだ。

マカオ航空 伊藤 有美氏

4 中国系企業の特徴3 個人主義

3点目としては、仕事が個人個人で分かれており、自身の仕事が終わればそれで良いという個人主義的な部分である。乙重氏は、日系企業の場合は終業時間になっても他の人が帰らないから帰りにくい、なんとなくみんなが定時よりも30分後に帰り始めるからそれに合わせるということがある。また、有給休暇の取得についても自分が休むと他の人に迷惑がかかると考えて取りにくいということがあるが、中国企業の場合は終業時間になったら帰るというのは当たり前で、また休みを取りにくいという雰囲気もないということだった。
瀧口氏からも、終業時間になっても仕事をしていると「まだ帰らないの?」と周りから声をかけられるという。日本の場合は仕事が終わっていないと残業するのが当たり前だが、時間内に終わらせるため、タイムマネジメントを意識して仕事をするようになったということだった。

中国大使館 瀧口 賀子氏

5 国系企業の特徴4 子育て

女性ならではの結婚、子育てという点では、日本と中国の子育て習慣の違いが如実に表れた部分だった。伊藤氏からは、中国では子どもが生まれたら子どもの祖父母が見るという環境がある。一方で日本では子どもの親が見るのが当たり前で、働く場合は保育園に預けることになる。中国だと0歳児など預けられる環境がほとんどないので、日本人にとって働き続けることが難しいのではないかという話があった。
乙重からは、日本は結婚を機に退職をする寿退社というのがあるが、中国にはない。日系の飛行機に乗ると添乗員は比較的若い人が多い。一方、中国系だと平均年齢がぐっと上がるということだった。これは、中国系の人が結婚をしたからといって退職をせず、そのまま働き続けるからで、そのような違いがあるのが特徴だということだった。

認定NPO法人東京都日中友好協会青年委員会副委員長 于 子豪

6 中国系企業の特徴5 職場環境

職場での同僚との関係、仕事先との関係についても日本とは異なる部分が見られるようである。岩間氏からは、同僚や職場の人たちと食事をする機会は、日本では歓送迎会や忘年会といった数か月に1度ぐらいだが、中国系企業だと食事会や飲み会の機会が非常に多いということだった。近年大学を卒業して入社する日本人の多くが飲み会への参加を断るなど、仕事が終わったアフターファイブでの懇親の場というのを敬遠する傾向がある。そのような点では中国系企業での飲み会文化というのはなじめない人も出てくるかもしれない。また、仕事上のパートナーや本社から人が来るとそれに対するおもてなしをしようという思いが感じられ、せっかくなので良い思い出を作ってもらおうという気持ちが強いということだった。
瀧口氏は上司と部下の関係のフラットさに驚いたという。もちろん権限上は上司と部下という関係になってはいるが、仕事をする上でもコミュニケーションでは対等で、友だち同士のような関係になり、話しやすいということだった。日本だと上司を敬うという習慣があるので、話しかけづらい点もあるという。伊藤氏からも会社の社風として仕事上では先輩を敬おうということが言われている、しかし、プライベートになると別で、一緒に出掛けたり、食事に行ったときは友だち同士のような関係になるということだった。

認定NPO法人東京都日中友好協会 日中友好青年大使 小松 詩織

中国系企業に入る際の心得

今後中国系企業に入る日本人にとっては、様々な事前の心構えが必要になると考えられる。登壇者が中国系企業に入ってから苦労した点、成長した点について話してもらった。
伊藤氏からは間違えた部分、自分に足りない部分について直接その場で言ってくれるのはとてもありがたい。しかし、言い方がきついので、その点が少しつらいということだった。
乙重氏からは、10年以上のキャリアがある自分に対して、同僚から「宝宝」と呼ばれることに違和感があったという。日本人からすると、年上だったり、キャリアが長い人にそのような言い方をすることはありえない。しかし、それは「ハニー」というような親しみを込めた言い方なのだと言われ、そうかと納得していると言っていた。また、日本だと「今度食事に行きましょうね」は社交辞令だが、中国だと本当に行くことになるので、その点の人付き合いについては注意が必要ということだった。
間氏からは、中国系企業では、その場物事が決まるため、その場で自分の意見を言うようになったということだった。会議が終わってから相談をすると、なぜ会議の時に言わなかっただということになってしまい、日本の場合は会議の後に個別で相談するということもあったので、その点は変化した部分だという。

終わりに

本人が中国系企業で働くことは、日本人としての習慣や考え方とは異なる部分で適応する必要があるものの、職場でのコミュニケーションの円滑さや周囲に気にせず退勤、有給の取得ができる点など、日本人にとって過ごしやすいと感じられる部分もあるのではないかと感じた。
一方で、子育て環境についてなど、日本ならではの働き方に配慮することも中国系企業には求められている。登壇者4人ともそろって中国系企業での働きがい、その面白さというのを感じているが、制度的な改善というのは今後も求められているのではなかろうか。

 

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