ビリビリ動画 日本人NO.1山下智博さんの考える日中を繋ぐコンテンツとは?

中国NO.1日本人クリエイター 山下智博さん

中国の動画共有サイトBilibiliを中心に、コンテンツを発信し、そのフォロワー数は日本人NO.1。
そんな山下智博さんにコンテンツを発信するなかで感じたこと、コンテンツが日中で果たす役割など、たっぷりお話をお聞きしました。

ぜひ最後までご覧ください!

山下智博さん~                                                                                                                                 2012年に上海へ単身移住後、語学を学びながら13年に中国ネットで動画配信を開始。
14年より配信開始した日本の文化を伝える動画シリーズ「紳士の大体一分間」が大ヒットし中国での活動が本格化。
現在中国の各プラットフォームのフォロワーは650万人を超え、再生回数は14億回にのぼる唯一無二の日本人クリエイター。
19年には「株式会社ぬるぬる」を設立し、中国人に向けたプロモーションサポートや、コンテンツの中国進出をサポートしている。

 

インタビューの様子(右下が山下智博さん)

 

中国でコンテンツ作りを始めたきっかけ

山下さんはコンテンツプロデューサーとして活動していらっしゃいますが、現在までどのようなことをやられてきたか教えてください。

2013年からBilibili動画、微博などの中国動画プラットフォームで日本の情報を中国の人に紹介し始めました。
現在までの動画再生回数は14億回にのぼるなど、とても多くの中国人に見てもらったのですが、最近は中国側のコンテンツのレベルも上がってきて、中国の若い人たちの関心を引きつけるのが難しくなってきました。

そこでもともと僕が日本のコンテンツを好きだったこともあり、日本の制作陣と協力して海外へ発信できないかと考え、2018年から「ザ!鉄腕!DASH!!」を立ち上げたスタッフたちと一緒に「窮豪旅游記」(注1)という旅番組を始めました。シリーズが好評で、シリーズ3まで作成して、2500万回ぐらい再生されています。

この番組作りをきっかけに、中国にローカライズした日本コンテンツは現地の人たちを楽しませる事ができると感じ、ここ3〜4年では日本コンテンツのローカライズ化に注力しています。

注1)中国人視点で日本の豪華旅行と貧乏旅行を比較し紹介するドキュメント旅バラエティ番組

ーそもそも2013年に上海でコンテンツを発信し始めたきっかけはなんだったのでしょうか?

現地の中国人と話している時に、日本のニコニコ動画に似ているBilibili動画というプラットフォームが中国にあると知りました。
日本好きの中国人はよく見ているので、動画をやったらバズるのではと言われて始めてみたのがきっかけです。

実は最初はあまりよくわからない感じで始めたんですが(笑)、当時は日本人で中国に向けて発信している人はいなかったので、タイミングが良かったということもあって、中国で有名になることができました。

山下さんはよく「日中間のローションになりたい」という言葉をおっしゃっていますが、この言葉にはどういった思いが込められているのですか?

「架け橋」という言葉はよく聞かれると思いますが、あまりにも真面目に「架け橋」や「日中友好」と掲げても共鳴してくれる人は限られていると思うんです。

僕は自身のことをそんなに優等生ではないと思っていて、「日中の架け橋に!」とうたうよりは、ただ自分が面白いと思うものをシェアして、それを良いと思った人が反応してくれるというのがちょうど良かったんです。日中の政治問題は色々とありますが、政治と娯楽は別なので、皆さん動画が面白ければ見るし、面白くなければ見ません。僕を応援してくれている中国人も「山下智博という人が面白いコンテンツをあげていたから見た。それを見て日本を好きになった」という人が多くて、そういう反応が素直に嬉しいんです。

そういう想いがあって「架け橋」というような格式ばった言葉ではなく、政治など摩擦がある中でどうポジティブに日中関係を捉えられるかという発想で「ローション」という言葉を使うようになりました。中国の人たちも山下らしいねということで、パワーワードとして覚えてくれていて嬉しく思います。

どうして中国人に受け入れられるコンテンツを作っていけるのか

コンテンツ作りで、中国の人に受け入れられるために意識していることはありますか?

10年近く中国で発信するなかで、中国の流行りと伝統的な中国人の好みが分かるようになってきました。なので、中国に向けたコンテンツを作る時にはそういった要素を入れていくようにしています。

最近だと、小樽を舞台にした「情緒『Re』-小樽の新たな夜明け-」(動画はこちらから)というミニドラマを作りました。僕の実家がある小樽の福島工務店がクライアントとなり、会社の取り組みと小樽の観光業をPRしたいということで声をかけていただきました。中国と日本の方の両方に見てほしかったので、中国人にも好まれる要素を入れることも意識しました。

たとえば、今回の話のテーマを家族にしたのも、中国は情に厚い人が多くて家族ストーリーが好きということがあったためです。

 

ショートムービー「情緒」より

 

ー私も拝見しましたが、日本の景色がとてもきれいに描かれていますよね。

小樽を舞台にした「ラブレター」という映画が人気を博したのも、圧倒的美しい風景があったからだと思っています。そのため今回の撮影でも日本の美しい田舎の風景を一番感動できるシーンに持ってこようと思いました。

ショートムービー「情緒」より

 

ー今回の動画は日中両国に向けてということでしたが、逆に日本の人にも楽しんでもらえるようにということで工夫したことはあるか?

10年近く中国で発信し続けていたので、日本人の方が何を喜んでくれるのかというのは、今まさに勉強しているところなんです。
そこで一番勉強になったのは、2021年から2022年に「ブイ子のバズっちゃいな!」(注2)という番組の制作・出演を行ったことです。Bilibiliで流行っている動画を日本人にも紹介する内容で、バイキングの小峠さんとVtuberさんに見てもらいました。

番組内で動画の紹介や解説を私がしていたのですが、例えばどういうツッコミを入れると日本人は笑ってくれるのかということがとても勉強になりました。

注2)2020年から21年にテレビ朝日で放送されたバラエティ番組。
Bilibiliに番組のアカウントを創設し、中国でバズる秘密を学び動画を制作するという内容

日本の制作チームと活動して感じたこと

コロナで日本に帰国後、日本のテレビ番組制作チームとともに「ブイ子のバズっちゃいな!」という番組作りに携わった山下さん。
そこでのエピソードも詳しく伺いました。

「ブイ子のバズっちゃいな!」では、どういった番組作りを行っていたのですか?

僕を含めたコンテンツチームがBilibiliなどから、面白い動画や再生数の多い動画を何十個もピックアップして、テレビ局の番組スタッフに選んでもらっていました。それを自分たちで中国側から使用の許可を取って、番組で流すということをやっていました。

ーどういった動画が日本での反応が良かったですか?

発明王の男性がよく出てきたんですが、彼はとても人気がありましたね。もともとは鉄鋼の職人なんですが、そのスキルを使って全く役に立たないものや意味のないものを作るんです。しかもそれがとてもハイクオリティ。例えば、ピアノを分解して焼き鳥機を発明したりしていました笑)

そういった意味では言葉がいらないコンテンツは反応が良かったです。中国でしか通じないネタはたとえ字幕をつけても、日本人に受け入れてもらうことは難しいです。見た目のインパクトがあって、分かりやすい動画は反応が良いんです。小峠さんのリアクションも全然違いました(笑

「ブイ子のバズっちゃいな!」番組収録の様子 左から山下さん、むいむいさん、冷水さん、李さん

 

「中国→日本」というコンテンツの流れを作るうえで難しかったことはありますか? 

中国で評価されている動画を日本に持ってくるという今回の番組制作は、「日中のローション」という役割の最たるものだと思っていました
ただ、番組自体は皆さん面白く見てくれて感想を言ってくれたりするのですが、次のアクションに繋げてもらうことができなくて‥。中国のエンタメへの興味・関心は日本ではまだまだ少ないなと感じました。その点で中国から日本へのコンテンツ移入というのは、まだ課題が多いと感じましたね。

中国のハイテク技術などは注目されやすいですが、エンタメやコンテンツになると韓国のものと比べてまだ身近に感じにくいという部分があります。
日本の人が憧れる中国のスターが出てくると変わってくるのではないかと思い、自身もそのお手伝いができたら良いなと思っています。

今後、山下さんが作りたいコンテンツとは

中国で約10年コンテンツを発信し、去年は日本の地上波でも動画を発信してきましたが、今後やりたいことはありますか?

たくさんあります!

その1つに、中国版のカンブリア宮殿のようなコンテンツを作りたいと思っています。
今は世界中で人の往来が減り、各企業も売上が減少しています。そのなかで、日本の会社をインターネットコンテンツを通じて中国に紹介することは非常に意義があることだと思います。

以前まで中国の製品は「安かろう、悪かろう」というイメージでしたが、ここ4〜5年で見た目やデザイン、機能性が格段に向上してきました。消費者が多い分価格も安いので、中国人の中にも国内企業の製品を好んで買う人が増えてきています。しかしそういった新興企業が多い分、日本のように100年以上続く老舗企業は少なく、企業伝統やブランディング能力は中国はまだ弱いんです。逆に言うと、日本企業がこの強みをうまく押し出せたらまだまだ中国市場でも勝負ができます。なので中国に向けて、どういう人がどういう気持ちで作っていているのか、例えばこの企業の製品を使うことで環境に貢献できるとか、そういった企業の裏側を伝え、ブランディングしていくことが大切です。
中国で今流行っているライブコマースやEコマースはいかに安売りするかがアピールポイントになっていますが、そうではなくその企業の魅力を伝えるコンテンツを出せたら、「好きな企業の商品」として人々が買ってくれるようになると思います。

そのためには、日本でいう「カンブリア宮殿」、「ガイアの夜明け」のようなコンテンツが効果があるのではないかと思います。
それを中国の人たちに向けて作っていきたいですね。

山下さんが「日中プロデューサー」として目指す日中交流

山下さんは「日中プロデューサー」になりたいということをおっしゃっていますが、そのために成し遂げたい目標はありますか?

自分と同じようにコンテンツをプロデュースできる人材を増やしていくことが今の目標です。
プロデューサーが多ければ多いほど、日中に届けられるコンテンツは増えていきます。現在、中国に刺さる面白いものを作れる人はまだ限られていています。個人が成功して、その人が人気になっても、日中間で大きなムーブメントとしては盛り上がりません。番組やコンテンツの数自体を増やしたほうがより多くの人が参入できるので、多くの人と関わりながら沢山の番組を作りたいと思っています。そしてそれをどんどん中国に発信していきたいです。

そのうえで今年の目標は、日本にいる中国人、日本にいる中国に興味のある人たちとプロジェクトを立ち上げることです。日本と中国の間でチャレンジしたいことを広く公募したいと思っています。こういうことをしたい!というアイデアに対して、応援したい人を集めながら、プロジェクト化していき、次世代の若い人たちのやりたいことを応援していく。そのなかで、僕のノウハウや人脈をシェアしながら、サポートする塾のような体制を作れたらいいですね。こうして多くの人達のプロデュース力を高めつつ、日中間で大きなことにチャレンジしていきたいなと思っています。

今や動画は個人で発信できる時代で、熱意や想いがあれば簡単に作れてしまいます。しかしそれを継続していき、マネタイズに結びつけられる人は一握りです。「コンテンツ×経営」という視点を自身も学びながら、それを広めていきたいです。また、外国人が異国の地でクリエイティブをするには信頼できる仲間が必要で、このことは私も中国で活動するうえでとても痛感しました。そのため、日本にいる中国人インフルエンサーや中国人留学生を大切にして、彼らをサポートしていきたいと思っています。そこから、彼らに共感したり、憧れを持つ日本人が増えて、日中間のコンテンツが更に盛り上がった嬉しく思いますね。

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山下さん、貴重なお話しありがとうございました。
今後の活動を楽しみにしています。

インタビュアー
山下さんのコンテンツに対する想いや、次々と出てくる斬新なアイデアを伺い、コンテンツが日中間で果たす無限の可能性を感じました。特に、「自分が一人が目立つのでは意味がなく、いかに次世代にプロデュース力を繋げていけるか」というお話は、中国でのコンテンツ作りを牽引してきた山下さんならではのお言葉だと感じ、とても印象的でした。今回のインタビューを通して、今後私も日中の様々なコンテンツに触れ、彼らの活動を応援することからしていきたいと感じました。今後の山下さんが発信する作品、日中間のプロジェクト楽しみにしています!インタビューありがとうございました。

 

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