News!「世界平和と地域経済創生へ」(7/30・31開催)学術発表会~発表内容(要約)紹介「その1鈴木高啓(江西省財経大学講師)」、「その2松本理可子(早稲田大学現代中国研究所・招聘研究員)」

「创造世界绿色和平与区域经济发展国际学术会议」
 ~学術会議に参加して~発表者紹介(今回2発表者)

発表者1

 鈴木高啓 「中国江南古村に見る文化保護と観光開発」について(要約)

 江西省財経大学日本語講師

 中国南方地区、長江の中下流に位置する江西省。贛江を中心とする五つの水系と、その中心に中国最大の淡水湖・鄱陽湖を擁し、観光資源として世界遺産を含む山渓、河川、湖など多種多様な自然景観を有するこの省で、今にわかに注目を集めているのが農村観光である。農村の素朴な風景・文化を観光資源として活用し、体験型観光モデルとして、地域産業の振興に活用しようという潮流である。

 今回は視察で訪れた安義県古村を例にとり、その特徴と問題点について考察した。安義県古村は、南昌市内からの距離は僅か30km、昌北空港からでも35km、約1400年の歴史を持ち、羅田村、水南村、京台村の3つの村落から成る。中国の典型的な贛南文化村であり、国家4A級観光地区に指定され、「中国歴史文化名村」の称号を獲得している。村内にはほぼ完全な形で保存された明清代の古建築の他、千年以上の歴史を持つ地下水系が縦横無尽に張り巡らされ、街路は地下水系の上に石畳が敷かれたものが今なお保存されている。

 歴史ある魅力的な農村も、観光開発の観点からは課題が山積している。アクセスや民芸品など多くの問題を抱える中、最も深刻なのは人的課題である。村内の優秀な若者は省内の都市部や中国沿岸部へ流出してしまっており、観光産業を支えることができる専門職員は片手の指で数えられるほどしかいない。観光開発される省内の農村は、多くが元々最貧困地区や限界集落であった地域である。政府が投資して築いた産業も、村民の積極的な参加がなければ持続的な発展は出来ず、村民の文化意識や積極性の育成は急務である。

 そして何より、観光客の視点から見た開発と育成を体系的に行わねばならない。「脱貧困」が前のめりになりすぎていて、文化の保存や観光客の歓迎という表看板から裏側が透けて見えてしまっている。観光を、地域を支える重要な産業として、村民全体で作り上げる体制が必要であろう。

 おわりに~「感想」  

 今回は鹿児島の観光に関するご発表もあり、大変興味深く拝聴した。世情不安で旅行客が減少し、

業界全体が苦境にあるという。改めて健康や平和、国際協力の重要性を感じた。

 

🔷発表者2

  松本理可子「中医薬企業と貧困撲滅対策」について(要約)
        早稲田大学現代中国研究所・招聘研究員

   

 2015年10月16日に北京で開催された「2015貧困削減・発展ハイレベルフォーラム」の基調演説で習近平主席は「今後5年間で中国の7,000万人余りの貧困人口をすべて貧困から脱却させる」という開発アジェンダを発表した。同時に、貧困層に対しては「人に魚を与えるよりも、漁を教えた方がいい」という例え話を示し、貧困対策には教育対策が欠かせないと訴えた。

 中医薬企業・同仁堂も政府の貧困撲滅に対して全面的に関わっていくことになったが、もともと清朝期より寄附金や科挙受験への協力などフィランソロピーに積極的だった同社にとって、教育機関への寄附や「一企一村(ひとつの企業がひとつの村を助ける)」活動など抵抗ないものだった。そこで、P. ブルデューが提示した「文化的再生産(支配階級の子供が高度な教育を持つことで、さらにその上に文化資本が再生産されていく)」を「学校システム」から「企業システム」にも援用できるのではないかと検証を試みた。本発表はその第1弾である。

 同仁堂を含む、上場している主な中医薬企業7社(同仁堂、昆薬集団、中新薬業、天士力、白雲山、哈薬集団、雲南白薬)の傾向をAnnual Report(2016-2020)から見てみると、習近平政権の威信をかけた政策への協力であっても温度差があった。創業以来、中医学の伝統を「文化資本」として長い時間をかけて醸成してきた企業ほど、特にこのような活動に熱心だったのである。その熱心さは企業規模や企業業績の良し悪しとは必ずしも連動していない。企業業績に関係なく非常に熱心だった企業が、同仁堂や天士力である。

 「養生」思想を背景として、人々の生活に対する社会貢献を文化資本として創業から継続して守ってきた企業においては、その文化は再生産され、社会貢献(今回は貧困撲滅政策)のアクターが政府であれ非政府組織であれ親和性を持ち、前向きに関わっていったとみる。

おわりに~【感想】

 暑い夏にスパイスのよく効いた料理が欲しくなるのと同様、年齢も性別も国籍も関係ない~こうしたエネルギッシュな議論の場は刺激となって、自らに良い効果をもたらしました。

 

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